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後継者不在のクリニックが知っておくべき事業承継の選択肢と準備のポイント

後継者不在のクリニックが知っておくべき事業承継の選択肢と準備のポイント


深刻化する医療機関の後継者不在問題


日本の医療機関において、院長の高齢化と後継者不在が深刻な課題となっています。厚生労働省の調査によれば、診療所の院長の平均年齢は年々上昇しており、60歳以上の開業医の割合は全体の半数を超えています。しかし、子どもが医師の道を選ばない、あるいは別の診療科を専門とするケースも増え、「継ぎたくても継げない」「継いでくれる人がいない」という状況に直面している医療機関経営者が増加しています。


事業承継対策を先送りにすると、突然の病気や事故により急な閉院を余儀なくされ、長年通院してきた患者さんに迷惑をかけるだけでなく、医療機関の財産価値も失われてしまいます。本記事では、後継者不在のクリニックが検討すべき事業承継の選択肢と、それぞれのメリット・デメリット、準備のポイントについて解説します。


選択肢1:親族内承継(子どもや親族への継承)


✓ メリット

親族内承継は、最も伝統的で患者さんや職員からも受け入れられやすい方法です。後継者が既に医療現場で働いており、診療方針や経営理念を理解している場合、スムーズな承継が期待できます。また、相続税の特例措置や事業承継税制を活用できる可能性もあります。


✗ デメリットと課題

しかし、子どもが医師免許を持っていても、専門分野が異なる場合や、都市部で勤務医として活躍している場合など、現実的に承継が難しいケースも少なくありません。また、無理に承継させることで後継者の人生設計を制約してしまう可能性もあります。


► 必要な準備

親族内承継を選択する場合、後継者との十分な対話が不可欠です。承継時期、診療方針の継続性、医療法人化の検討、借入金の引継ぎ方法など、具体的な条件を早期に協議しておく必要があります。個人事業の場合は医療法人化することで、理事長交代という形でスムーズな承継が可能になります。


選択肢2:第三者承継(M&A・事業譲渡)


📊 M&Aの現状

近年、医療機関のM&Aは一般的な選択肢として認知されるようになりました。医療法人間の合併や、個人診療所の事業譲渡など、様々な形態があります。特に立地条件が良く、安定した患者基盤を持つクリニックは、承継を希望する若手医師や医療法人から関心を持たれやすい傾向にあります。


✓ メリット

第三者承継の最大のメリットは、長年築いてきた医療機関を存続させ、地域医療を継続できることです。また、適切な評価額で譲渡することで、老後資金の確保やリタイア後の生活設計が可能になります。従業員の雇用も維持され、患者さんへの医療提供も継続されます。


✗ デメリットと注意点

一方で、譲渡価格の設定や承継条件の交渉には専門的な知識が必要です。また、譲渡後の診療方針の変更により、従来の患者さんが離れてしまうリスクもあります。医療法人の場合、持分の有無により手続きや税務上の扱いが大きく異なるため、専門家のアドバイスが不可欠です。


► 承継の流れ

第三者承継を検討する場合、まず医療機関専門のM&A仲介会社やコンサルタントに相談することが一般的です。クリニックの財務状況、患者数、立地条件などを分析し、適切な譲渡価格を算定します。その後、承継候補者とのマッチング、交渉、デューデリジェンス(詳細調査)、最終契約という流れで進みます。承継完了までには通常6か月から1年程度の期間が必要です。


選択肢3:医療法人化による承継準備


⚠ 個人診療所の限界

個人診療所の場合、院長の死亡や引退と同時に医療機関は廃止となり、事業の継続が困難になります。また、診療所の資産や負債は個人の相続財産となり、相続手続きが複雑化します。


✓ 医療法人化のメリット

医療法人化することで、理事長が交代しても法人格は存続し、医療機関の運営を継続できます。これにより、承継のタイミングを柔軟に設定でき、段階的な権限移譲も可能になります。また、医療法人は社員総会や理事会を通じた組織的な意思決定が行われるため、個人経営よりもガバナンスが強化されます。


► 設立のタイミング

後継者不在であっても、将来的な第三者承継を見据えて医療法人化しておくことは有効な戦略です。医療法人の設立には、都道府県への申請、定款の作成、資産の移転など、多くの手続きが必要となります。通常、設立申請から認可まで4〜6か月程度かかるため、早めの準備が重要です。


選択肢4:廃業・閉院の手続き


📋 計画的な閉院

後継者が見つからず、譲渡も難しい場合、計画的な廃業を選択することも一つの方法です。突然の閉院は患者さんや従業員に大きな影響を与えるため、少なくとも6か月から1年前には閉院の方針を決定し、適切な準備を進める必要があります。


🏥 患者さんへの配慮

閉院を決定した場合、患者さんには十分な期間をもって告知し、転院先の紹介や診療情報の提供を行います。特に慢性疾患で定期的に通院している患者さんには、きめ細かなフォローが必要です。診療録(カルテ)は閉院後も5年間保存する義務があるため、適切な保管方法を検討しておく必要があります。


► 必要な手続き

閉院に伴う行政手続きは多岐にわたります。保健所への診療所廃止届、厚生局への保険医療機関廃止届、麻薬施用者免許の返納、X線装置の廃止届など、それぞれ提出期限が定められています。また、従業員への退職手続き、リース契約の解約、医療機器の処分なども計画的に進める必要があります。


💰 財産の処分

医療機器や什器備品の処分、不動産の売却または賃貸借契約の解約なども重要な検討事項です。医療機器の中には中古市場で一定の価値を持つものもあるため、専門の買取業者に相談することも検討できます。


事業承継は早期準備が成功の鍵


⏰ 5年前からの準備を推奨

事業承継対策は、実際に引退を考え始める5年以上前から始めることが理想的です。特に第三者承継を検討する場合、承継候補者の選定、交渉、引継ぎ期間を考慮すると、十分な時間が必要です。また、医療法人化する場合も、申請から認可、運営の安定化までに相応の期間を要します。


👥 専門家チームの構築

事業承継は、医療、法務、税務、財務など多岐にわたる専門知識が必要な複雑なプロジェクトです。行政書士、税理士、弁護士、公認会計士など、それぞれの専門家と連携しながら進めることで、スムーズな承継が実現します。


🔄 定期的な見直し

一度承継計画を立てても、後継者の状況変化、医療制度の改正、地域医療の動向などにより、計画の見直しが必要になることがあります。年に一度は承継計画を見直し、必要に応じて軌道修正を行うことが重要です。


行政書士が支援できる事業承継サポート


📝 医療法人設立支援

医療法人の設立申請書類の作成、定款の作成、都道府県との事前協議など、医療法人化に必要な手続きを総合的にサポートします。医療法人設立は、事業承継対策の重要な第一歩です。


📄 許認可手続きのサポート

診療所の開設許可、保険医療機関の指定申請、医療機器の設置届出など、医療機関の運営に必要な許認可手続きを代行します。承継時には、これらの許認可の引継ぎや新規取得が必要になります。


📑 契約書類の作成

事業譲渡契約書、不動産賃貸借契約書、雇用契約書など、承継に関連する各種契約書の作成をサポートします。契約内容の法的妥当性を確保し、将来のトラブルを防ぎます。


📋 定款・諸規程の整備

医療法人の定款変更、就業規則の整備、給与規程の作成など、組織運営に必要な規程類の作成・変更手続きを支援します。


🤝 関係機関との連絡調整

保健所、厚生局、都道府県庁など、医療機関に関連する行政機関との連絡調整を行います。複雑な行政手続きをスムーズに進めるための橋渡し役として機能します。


まとめ:今すぐ始める事業承継対策


医療機関の事業承継は、「まだ元気だから」「もう少し先のこと」と先送りにしがちですが、突然の病気や事故は誰にでも起こりうることです。後継者不在の問題は、早期に向き合うことで選択肢が広がり、より良い解決策を見つけることができます。

親族内承継、第三者承継、医療法人化、計画的な廃業など、それぞれの選択肢にはメリットとデメリットがあります。ご自身の状況、後継者の有無、クリニックの特性、地域医療での役割などを総合的に考慮し、最適な方法を選択することが重要です。

アーネスト行政書士事務所では、医療機関の事業承継に関する豊富な経験と専門知識を活かし、開業医の皆様の事業承継計画をトータルでサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。将来を見据えた事業承継対策を、今から一緒に考えていきましょう。




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