【2026年4月施行】医療法改正でクリニック開業・分院・オンライン診療はどう変わる?押さえておきたい3つの重要ポイント
クリニックの新規開業や医療法人の分院展開では、物件選びや資金計画、人材確保だけでなく、開設に伴う行政手続きを早い段階から整理しておくことが重要です。
特に2026年は、医療機関の開設・運営に関わる制度が大きく変わりました。
2025年12月12日に公布された「医療法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第87号)は、その内容に応じて順次施行されています。
そのうち、クリニックの新規開業、医療法人の分院展開、オンライン診療に直接関係する重要な改正が、2026年(令和8年)4月1日から施行されました。
今回、特に実務上押さえておきたいのが、次の3点です。
① 外来医師過多区域における無床診療所の新規開設に「事前届出」が必要に
② 保険医療機関の管理者に新たな要件が設定
③ オンライン診療が医療法上に明確に位置付けられ、新たな基準・届出制度が整備
なかでも注目したいのが、「外来医師過多区域」における新規開業のルール変更です。
大阪市二次医療圏は、厚生労働省が示した「外来医師過多区域」の候補区域に含まれており、今後の大阪府による指定状況によっては、大阪市内でのクリニック開業に新たな事前手続きが必要となる可能性があります。
また、医療法人が分院を開設する場合には、分院長となる医師が新しい管理者要件を満たしているかどうかも重要になります。
オンライン診療についても、これまでの指針を中心とした運用に加え、医療法上の基準や届出制度が整備されました。
つまり今回の改正は、単に「提出書類がひとつ増えた」という内容ではありません。
開業する場所、院長・分院長の人選、そして開業までのスケジュールそのものに影響する可能性がある改正です。
この記事では、2026年4月から施行された改正のうち、クリニック開業・医療法人の分院展開・オンライン診療に関係する3つのポイントについて、実際の手続きをイメージしながら分かりやすく解説します。
📋 今回の記事で押さえる3つの改正ポイント
① 外来医師過多区域での無床診療所の新規開設に事前届出
対象:外来医師過多区域で無床診療所を新規開設する方
② 保険医療機関の管理者要件の新設
対象:新たに院長・分院長など、保険医療機関の管理者となる医師
③ オンライン診療に関する法的ルールの整備
対象:オンライン診療を行う病院・診療所、オンライン診療受診施設を設置する事業者等
それぞれ詳しく見ていきましょう。
🏥 ① 外来医師過多区域における無床診療所の事前届出制
◆ 制度の概要
医師の地域偏在を是正するため、外来医師が特に多い地域について、都道府県知事が「外来医師過多区域」を指定できる制度が創設されました。
この外来医師過多区域で新たに無床診療所を開設しようとする場合、原則として、診療所を開設する日の6か月前までに都道府県へ事前届出を行う必要があります。
根拠となるのは医療法第30条の18の6です。
都道府県は、「外来医療に関する協議の場」などを通じて、在宅医療や夜間・休日の初期救急など、その地域で不足している外来医療機能を整理します。
そのうえで、外来医師偏在指標や診療所数などを踏まえ、外来医師過多区域を指定する仕組みです。
📌 主な手続きのポイント
提出先
都道府県
期限
原則として、診療所を開設する日の6か月前まで
主な届出内容
・診療所の名称、所在地
・診療科
・従業者の定員
・開設予定日
・地域外来医療を提供する意向の有無
・提供する場合は、その内容・頻度・時期
・提供しない場合は、その理由 など
なお、やむを得ない事情がある場合として厚生労働省令で定めるケースを除き、対象となる場合には届出が必要です。
また、必要な届出を行わなかった場合や虚偽の届出をした場合には、30万円以下の過料の対象となる可能性があります。
◆ 「外来医師過多区域=開業できない」ではありません
この制度は、外来医師過多区域でのクリニック開業そのものを禁止する制度ではありません。
届出内容を踏まえ、都道府県知事が新規開業者に対して、地域で不足している医療機能の提供を要請することがあります。
その要請に応じない場合には、協議の場での説明などを経て、
要請 → 勧告 → 公表
といった段階的な対応が行われる可能性があります。
さらに、要請や勧告に従っていない場合には、保険医療機関の指定にも影響する可能性があります。
通常、保険医療機関の指定期間は6年ですが、要請に応じなかった診療所については、通常より短い期限付き指定となる仕組みが設けられています。
一方、その後に要請・勧告に従ったことが確認された場合には、次回の指定期間が通常の期間に戻る運用も示されています。
つまり、これは開業そのものを禁止する制度ではなく、新規開業者に対して、地域で不足している医療機能への協力を促す制度と考えるのが適切です。
📍 大阪市は「外来医師過多区域」の候補区域
厚生労働省は、外来医師過多区域の候補となる基準として、
・外来医師偏在指標が「全国平均値+標準偏差の1.5倍」以上
かつ
・可住地面積当たりの診療所数が全国の二次医療圏の上位10%
という基準を示しています。
この基準に該当する候補区域として全国9つの二次医療圏が示されており、その中に**大阪市二次医療圏(大阪市)**も含まれています。
大阪市については、外来医師偏在指標が全国平均値より1.94標準偏差高い水準であり、可住地面積当たりの診療所数についても非常に高い水準となっています。
⚠️ 「候補区域」と「指定区域」は別です
ここは特に注意が必要です。
国が示した区域は、あくまで「外来医師過多区域の候補」です。
実際にどの地域を外来医師過多区域として指定するかは、最終的に都道府県知事が決定・公示します。
また、二次医療圏全体ではなく、地域の実情に応じて市区町村単位や地区単位など、より細かい区域で指定される可能性もあります。
そのため大阪市内での開業を予定されている場合には、
「大阪市が候補だから必ず対象になる」
とも、
「現時点で指定されていないから関係ない」
とも考えず、開業予定地について大阪府の最新の指定・公示状況を確認することが重要です。
⏰ 開業スケジュールはこれまで以上に早めの準備を
今回の制度で、実務上特に重要なのが「6か月前」という期限です。
外来医師過多区域に指定された地域では、原則として診療所の開設日の6か月前までに事前届出を行う必要があります。
医療法人が診療所や分院を開設する場合には、従来から必要であった定款変更認可や診療所開設許可、開設後の届出などに加えて、外来医師過多区域に該当する場合には、この事前届出も考慮しなければなりません。
そのため実務上は、
・開設予定地
・診療科
・開業予定日
・医師、スタッフの体制
・地域で提供する医療機能
・物件や内装工事のスケジュール
・資金計画
などを、従来以上に早い段階から具体化しておくことが重要です。
これからは、
「物件を契約してから行政手続きを確認する」
のではなく、
「物件を決める前から、その場所で必要となる行政手続きを確認する」
という進め方がより重要になります。
当事務所としては、余裕を持って開業予定日の1年程度前から手続き全体のスケジュールを整理しておくことをおすすめします。
👨⚕️ ② 保険医療機関の管理者要件が新設されました
2026年4月1日から、保険医療機関の管理者となるための新たな要件が設けられました。
改正後は、原則として「保険医であること」に加え、一定の診療従事経験等を満たすことが求められます。
これからクリニックを開業して院長となる先生だけでなく、医療法人が新たな分院を開設し、分院長を選任する場合にも重要な制度です。
📌 基本となる経験要件
【2026年4月1日時点で臨床研修を修了していない医師】
原則として、
・保険医であること
・臨床研修修了後、病院において3年以上、保険診療に従事した経験を有すること
が必要です。
医師の場合、この区分では「病院」における経験が必要となる点に注意してください。
【2026年4月1日時点ですでに臨床研修を修了している医師】
経過措置として、
・保険医であること
・臨床研修期間を含め、病院または診療所において3年以上、保険診療その他の業務に従事した経験を有すること
などの要件が設けられています。
また、単に「3年間在籍していた」というだけではなく、勤務日数や勤務時間についても基準があります。
専門医資格やキャリア形成プログラム、公務員としての医師経験など、3年以上の診療従事経験とは別の要件によって管理者となることができるケースもあるため、候補者ごとに確認が必要です。
⚠️ すでに院長をしている先生には経過措置があります
今回の改正で誤解しやすいポイントです。
2026年4月1日時点ですでに保険医療機関の管理者であった方については、同一の保険医療機関の管理者である限り、施行日から3年間の経過措置が設けられています。
そのため、今回の改正によって、既存の院長が2026年4月1日から直ちに管理者を続けられなくなるわけではありません。
一方で、新たな医療機関の管理者となる場合や分院長に就任する場合などには、新しい管理者要件を満たしているか確認が必要になります。
🏥 分院展開を考えている医療法人は特に注意
医療法人にとって、今回の管理者要件の改正は大きな影響があります。
例えば、新しい分院の院長として予定していた医師について、
「医師免許があり、臨床経験も十分だから問題ないだろう」
と考えていたものの、実際には改正後の保険医療機関の管理者要件を満たしていなかった、というケースも考えられます。
2026年4月1日以降に保険医療機関の新規指定や管理者変更を行う場合には、管理者となる方が要件を満たしていることを確認し、必要に応じてその要件を証する書類を準備する必要があります。
分院長の人選に問題が生じれば、分院開設のスケジュールそのものが遅れる可能性があります。
開業が数か月ずれるだけでも、
・物件の賃料
・スタッフの人件費
・医療機器のリース料
・内装工事費
・広告費
など、大きな負担につながりかねません。
そのため、新たに管理者や分院長を採用する場合には、診療実績や専門性だけでなく、
「2026年4月改正後の保険医療機関の管理者要件を満たしているか」
という観点から、できるだけ早い段階で経歴を確認しておくことが重要です。
💻 ③ オンライン診療が医療法上に明確に位置付けられました
◆ 何が変わった?
これまでオンライン診療は、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」などを中心として運用されてきました。
2026年4月1日の改正により、医療法に「オンライン診療」そのものの定義が設けられました。
さらに、厚生労働大臣がオンライン診療の適切な実施に関する基準を定め、オンライン診療はその基準に従って行わなければならないことが法律上明確になりました。
基準では、
・オンライン診療に必要な施設、設備、人員
・患者がオンライン診療を受ける場所
・患者への説明
・急変時に適切な治療を提供するための医療機関との連携体制
・その他オンライン診療を適切に実施するために必要な事項
などが定められています。
📌 従来の「オンライン診療の指針」がなくなったわけではありません
今回の改正によって、従来の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が廃止され、新しい基準に完全に置き換わったわけではありません。
同指針は2026年4月にも改訂され、現在も運用されています。
したがって、オンライン診療を行う医療機関では、
医療法上のオンライン診療基準
と
厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」
の双方を確認して運用することが重要です。
📋 オンライン診療を行う医療機関の届出事項も変更
2026年4月1日から、病院・診療所の開設届等に関する届出事項に、
「勤務する医師または歯科医師がオンライン診療を行うときは、その旨」
が追加されています。
また、その届出事項に変更が生じた場合についても、所定の変更届が必要となります。
一方、2026年4月1日時点ですでにオンライン診療を行っていた病院・診療所については、一定の経過措置が設けられています。
そのため、すでにオンライン診療を実施している医療機関についても、
「以前から実施しているので何も確認しなくてよい」
というわけではありません。
自院の届出状況や経過措置を確認し、必要な対応を整理しておくことをおすすめします。
🖥️ 「オンライン診療受診施設」という新しい制度も創設
今回の改正では、オンライン診療そのものに加えて、
「オンライン診療受診施設」
という新しい施設類型も医療法上に設けられました。
オンライン診療受診施設とは、簡単にいうと、患者が医療機関の医師によるオンライン診療を受けるための場所を、業として提供する施設です。
オンライン診療受診施設を新たに設置した場合には、設置後10日以内に所定の届出を行う必要があります。
所在地が保健所設置市や特別区の場合には、都道府県ではなく市長・区長が届出先となる場合があります。
また、届出事項の変更や施設の休止・再開・廃止等についても届出が必要となります。
ここで注意したいのは、
「通常の病院・診療所がオンライン診療を行う場合の届出」
と、
「オンライン診療受診施設を設置する場合の届出」
は別の制度だという点です。
オンライン診療を導入・運用する場合には、自院がどの手続きの対象となるのかを整理して確認する必要があります。
✅ 今すぐ確認したいチェックリスト
【これからクリニックを開業する先生】
-
開業予定地が外来医師過多区域に指定されているか
-
候補区域の場合、都道府県の最新の指定・公示状況を確認したか
-
開業予定日から逆算して6か月前の事前届出に対応できるか
-
地域で不足している外来医療機能を確認したか
-
管理者となる医師が改正後の管理者要件を満たしているか
-
保険医療機関指定まで含めた手続きスケジュールを整理しているか
【分院展開を予定している医療法人】
-
分院長候補が保険医療機関の管理者要件を満たしているか
-
勤務日数・勤務時間を含めた経歴を確認したか
-
専門医資格など、その他の管理者要件に該当するか確認したか
-
定款変更認可から保険医療機関指定までのスケジュールを確認したか
-
開設予定地が外来医師過多区域に該当しないか確認したか
【オンライン診療を行っている・始める医療機関】
-
オンライン診療を行う旨について必要となる届出を確認したか
-
2026年4月1日以前から実施している場合、経過措置を確認したか
-
医療法上のオンライン診療基準に適合しているか
-
最新の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を確認したか
-
患者への説明方法や院内マニュアルを見直したか
-
急変時の対面診療・連携医療機関の体制を確認したか
-
オンライン診療受診施設を設置・利用する場合、必要な手続きを確認したか
📞 まとめ|2026年の医療法改正は「開業する前」の確認がより重要に
今回の改正によって、クリニックの開業や医療法人の分院展開では、これまで以上に早い段階で法令上の要件を確認することが重要になりました。
ポイントを整理すると、
① 開業予定地
外来医師過多区域に指定されている場合、原則として開業6か月前の事前届出が必要になります。
② 管理者・分院長の人選
保険医療機関の管理者として、新たな経験要件等を満たしているか事前確認が必要です。
③ オンライン診療
医療法上の制度として明確化され、オンライン診療基準や届出事項への対応が必要となりました。
いずれも、開業や分院展開が進んでから問題が判明すると、スケジュールの変更や追加コストにつながる可能性があります。
特に、
「物件を契約した後」
「分院長を採用した後」
「開業日を決定した後」
に要件を確認するのではなく、計画段階から行政手続き全体を整理しておくことが重要です。
アーネスト行政書士事務所では、
・診療所開設に関する各種手続き
・医療法人設立認可申請
・分院開設に伴う定款変更認可申請
・医療法人の各種変更手続き
など、医療機関に関する行政手続きをサポートしております。
今回の医療法改正を踏まえ、
「この場所で開業する場合、どの手続きが必要なのか」
「この医師を分院長にして問題ないのか」
「開業予定日から逆算すると、いつから準備を始めればよいのか」
といった、開業・分院計画の初期段階からご相談いただけます。
◆ アーネスト行政書士事務所
📞 072-657-7011
📧 earnest0503@gmail.com
初回のご相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年8月時点で公表されている法令、厚生労働省通知、大阪府の公表資料等をもとに作成しています。外来医師過多区域の指定状況、地域で求められる外来医療機能、オンライン診療に関する手続き等については、今後の都道府県の指定・公示や通知等により変更・具体化される可能性があります。実際に開業・分院開設等を行う際は、最新の法令・通知および管轄行政庁の運用をご確認ください。